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旅とF1と車と男の嗜みをテーマとした後藤康成のブログ。

2011年のF1レースを左右する3つのレギュレーション

いよいよ、明日から2011 F1 GPがオーストラリアのメルボルンにてスタートします。そこで、2010シーズンから2011シーズンにかけてのF1レギュレーションの主な変更点について、忘備録をかねてエントリーします。

2011シーズン、レース展開を左右するのは、タイヤサプライヤーの変更(これは厳密にはレギュレーションではありません)、可変リヤウィングの導入、そしてKERSの復活という3点でしょう。

■タイヤサプライヤーの変更
昨年までブリジストンがタイヤを供給してきましたが、今シーズンからピレリーが供給することになりました。

タイヤはエンジンで発生させた動力をトラックに伝えるための大きなファクターとなります。今年複数回行われたテスト走行でピレリータイヤの特性が明確になりました。テスト走行でわかったことはピレリータイヤはブリジストンタイアyに比べて消耗しやすいということです。

当然のことながらタイヤのグリップがラップタイムを大きく左右します。磨耗しやすいということは、グリップ力の持続性が短くなることから、1レースあたりのタイヤ交換の回数、つまりピットインの回数が昨年より増えることになります。

F1ではドライバーの能力、マシン性能が華やかにフォーカスされますが、実はチームとしてのレース戦略が順位を決めるひとつのファクターでもあります。ピットストップはレース戦略を睨んだ戦術となります。ライバルのマシンの状況や、タイヤ消耗によるラップタイムの増減、ピットストップの時間など複数のファクターを考慮しながら適切なタイミングでピットインを行う必要があります。

今シーズンはピットストップ回数が増えることで、チーム戦略が順位に大きな影響をあたえることは間違いありません。

■可変リヤウィングの導入
F1の最も大きな醍醐味はオーバーテイク(追い抜き)の瞬間です。オーバーテイクが少ないレースはドライバーにとっても観客にとっても退屈なレースとなります。そこで、オーバーテイクを促進することを目的として可変リヤウィングが導入されました。

F1はサイエンスです。エアロダイナミクス(空力)の観点、つまり如何に空気抵抗を少なくさせるかがマシンを高速走行につながります。ストレートだけのレースであれば空気抵抗が少なくスピード重視のマシン設計ができるのですが、当然のことながらサーキットには多くのコーナーが存在します。コーナーではタイヤの横滑りを抑制することがラップタイム向上につながります。つまり空気抵抗によりダウンフォース(上から下へのパワーをかけること)を増加させタイヤをグリップさせることになります。

F1はラップタイムのスポーツです。より短いラップタイムで周回することで、結果的には速いマシンと言われます。実はラップタイムを短縮させるのは、ストレートのスピードではなく、コーナーワーク(より速く、きれいなラインでコーナを回る)ことポイントになります。

このような、ストレートのスピードと、コーナーのグリップという相反する空力特性を実現するためにリヤウィングの角度を動的に変更できるしくみが可変リヤウィングです。

この可変リヤウィングはいつでも使えるわけではありません。ドライバーはフリー走行および予選では、このシステムをいつでも使うことができます。しかし、レース中は制限があります。スタートから2周目までは使用できません。その後はドライバーが先行マシンの1秒以内を走行している場合のみ、サーキットの指定区間において使用することができます。

つまり、オーバーテイクを目的としているために先行車は利用できず、後続車だけが利用出来るというジョーカー的なルールが定められているのです。このルールによりエキサイティングなレース展開が期待できます。

■KERSの復活
KERSとは、運動エネルギー回収システム(Kinetic Energy-Recovery System)の略です。
ブレーキング時に電気エネルギーをチャージし、そのエネルギーを再利用し、エンジンの動力に加えてブーストできるというエコなシステムです。

実はKERSの搭載は厳密には規定の変更ではありません。2010年はFOTAにおいて「KERSは使用しない」という紳士協定が結ばれたため、採用チームは無くなくなりました。2011年に再導入が叫ばれレギュレーションに明示されました。

KERSの利用にも制限があります。各周回につき6秒あまりの間しか利用できません。さらにKERS搭載によりマシン重量も増加することから加速、減速の性能低下というデメリットもあることから、その能力を効果的に発揮できかという問題もあります。

また、十分なブレーキングを行われないと、電気エネルギーがチャージされません。ブレーキングポイントが少ない高速サーキットでは、KERSが威力を発揮しないという問題もあります。

この他にも多くのレギュレーション変更があります。これらについては以下のリンクを参照してください。いよいよ2011年の開幕です。明日の金曜日はフリー走行を皮切りに土曜日には予選、日曜日は決勝が行われます。

ワクワクする週末になりそうです

F1通信:F1技術/競技規約
Wikipedia:レギュレーションの変更