Blogot - 旅とF1と車と男の嗜み

旅とF1と車と男の嗜みをテーマとした後藤康成のブログ。

2012 F1マシンで段差ノーズはなぜトレンドになったのか

2月に入りほとんどのチームからニューマシンが発表され、いよいよ2012年のF1プレシーズンがスタートしました。

なんといっても今シーズンのマシンのエクステリアの特徴はフロントの段差ノーズのデザインです。2012年FIAは、マシンのフロント・セクションの高さを下げるレギュレーション変更を行いました。これはマシンが側面で衝突した場合、一方のマシンのノーズが他のマシンのコックピットを貫通する可能性を低下させる安全性対策のためです。

具体的にはマシンのコックピット前から150mmのノーズの最大高を、基準面から550mmに制限。しかしながら、コクピット前(モノコック前端)の最大高は625mmのままであり75mmの差が生じてしまうことになります。

この段差ノーズはなぜこれほどまでに注目されたのでしょうか。

F1マシンというと所謂モンスターマシンというイメージを持つ方が多いと思います。実のところ、F1マシンのパワー至上主義の古き良き時代はすでに終焉を迎えています。なんと、パワーユニットはここ数年の間に縮小化してきているのです。F1マシンの排気量は普通の乗用車とあまり変わらず2400ccなのです。さらに来年からは1600ccまで縮小されます。(もちろんエンジンのマテリアルや燃料は市販車と違います。)昨年優勝したRed Bullのマシン"RB7"は他のフェラーリやメルセデスGPに比べると、最高速度は圧倒的に遅いマシンでした。

では、なぜRed Bullは優勝できたのか?

RB7は他のマシンに比べて、中速コーナー、低速コーナーを圧倒的に早く駆け抜けたのです。つまり、トラック一周を最短のタイムで走るため必要だったのは最高速度ではなくバランスのとれた空力(エアロダイナミクス)でした。(もちろんドライバーセバスチャン・ベッテルの能力も優れていたのですが)この空力の最高傑作をRB7をデザインしたのが、Red Bull RacingのCTOであるエイドリアン・ニューウェイです。

現在のF1マシンの性能を大きく決定づけるのはエンジン性能よりもエアロダイナミクスなのです。今週行われたヘレステストでは、この段差ノーズがエアロダイナミクスにどのような影響を与えるか、各チーム評価を行ったことでしょう。