昨日のマレーシア・グランプリの公式予選にてセバスチャン・ブエミ(トロロッソ)のサイドポンツーン・カバーが外れコース上に散乱する事態が発生するという、ドキッとするシーンがありました。かなり大きなパーツであることから、すぐにレッド・フラッグとなりフリー走行は安全確認までサスペンドとなりました。
F1ではKERSやDRSといったスピードを向上させるテクノロジーを採用する一方、時速300kmを軽くオーバーするマシンの安全性についても最先端のテクノロジーの採用と共にコースの環境整備の基準を設けています。
アイルトン・セナが1994年5月1日、サンマリノグランプリの事故で他界以来、FIA、チーム、ドライバーなどの関係者が一体となって厳格な安全性基準を設定し安全性向上への取り組みを実施しており、セナ没後に死亡事故が発生していません。
多くの安全性基準の中で安全性に大きく寄与しているのがコクピット部分に採用しているモノコックの構造です。
モノコックは、スチールの2倍の強度で重量は5分の1のカーボン・ファイバーをベースとしたカーボン・ファイバー・マットで構成されています。カーボン・ファイバーの繊維は毛髪の5分の1の太さ(細さ)で、これらマットの間にハニカム構造のアルミニウム層が挿入されることで、モノコックの剛性をさらに高めています。(F1通信「モノコック:F1安全技術解説-4」に詳しい説明が掲載されています)
また、サーキット・レイアウトに目を向けると、マシンがコースアウトした場合にスピードを落とし、激突を防いだり激突の際の衝撃を和らげたりする構造として、芝生、サンドトラップ(波打たせた砂場)、グラベルトラップ(砂利または土を敷き詰めた場所)、タイヤバリア(専用のタイヤを積んで壁の前に並べたもの)などを導入しています。
昨年2010年のヨーロッパ・グランプリでレッドブルのマーク・ウェバーが、前方を走るロータスのヘイキ・コバライネンと接触。マーク・ウェバーが空中で縦に一回転した事故においても、このモノコックとサーキットの広いランオフエリア(舗装路の外側にある退避路及び退避スペース)により怪我一つ無く安全に停止しています。
2011年のヨーロッパ・グランプリのクラッシュ映像
さて、今日のマレーシア・グランプリもこれらの安全性基準の上でエキサイティングなレースが展開されることを楽しみにしています。