Blogot - 旅とF1と車と男の嗜み

旅とF1と車と男の嗜みをテーマとした後藤康成のブログ。

SaaS、PaaSあるいはクラウドコンピューティングとブレイクスルー

新年明けましておめでとうございます。1月5日から仕事始めということで、今回はちょっと長くなりますが、このエントリーで新年の挨拶とさせてもらいます。また、仕事関係の方には年賀状をお送りしていないため今年の僕の年賀状デザインをアップしておきます。(ちなみに年賀状を固定しているのは、年末に買ったワインです。)

今年のテーマは「Breakthrough(ブレイクスルー)」

昨年末から何度もエントリーしている通り、年々SaaS市場が成長してきており、フィードパスのSaaS事業をラピッドに成長させるとともに安定した営業利益を出すためにビジネス的にもテクノロジー的にも「Breakthrough」する必要があると考えている

この年末にノークリサーチから「2009年版 SaaS市場の実態と中期予測」が発表された。この内容はSaaSにとどまることなく、PaaS市場の予測含まれており、「国内SaaS市場規模 は2009年には2,207億円、 2012年に7,746億円に達する。」とのことである。われわれフィードパス社にとっては非常に景気のよい市場予測である。2009年の国内SaaS市場の1%でも食い込みたい。

昨年夏以降、SaaSというキーワードがベースとなり、IaaS (Infrastructure as Service)またはPaaS (Platform as a Service)と呼ばれるレイヤに注目が集まっている。米国のブログである「Cloudy Times」はクラウドコンピューティングをテーマとし、SaaS/PaaSに言及しているブログであり、昨年から通目してチェックしている。

この「Cloudy Times」に掲載された図で「The Onion」がSaaS/PaaS/IaaSの関係を明快に表している。タマネギをモチーフにした図である。その中でいずれのレイヤもAPI Setを持ち、利用者に提供することが大きな特徴であり、これまでのレンタルサーバーと違い点である。

PaaSとSaaSは重要な共通課題を持っている。SaaS/PaaSいずれのサービスを提供する場合でも一定以上の規模になるとインフラコストおよびインフラのマネジメントコストが増大し、コスト削減をすることにより営業利益を増大させる必要がある。

このように、ブレイクスルーするにはリーズナブルな価格でサービスを提供すしても営業利益が確保するだけの原価の低減が要求される。すなわち、インフラコストおよびインフラマネジメントコストの低減である。これも今年の大きなテーマでもある。

昨年後半からIT業界のキーパーソンと会食をするたびにこのような話をしているが、先日同じサイボウズグループでもあり沖縄でMSPサービスを提供している沖縄クロスヘッドの方にこの話をした際に、沖縄はインフラコスト(不動産コスト)もインフラマネジメントコスト(人件費)も東京に比べると大幅に安く、一般的なサービス出れば十分な回線品質(帯域幅)を提供できるという話を聞いた。これまでトラブル時はすぐに駆けつけられる都心部のiDCにサーバーを収容するのがセオリーとされてきたが、GoogleにしてもAmazonにしても米国では人口の集中していない閑散とした地域にiDCを構えているのが現状である。

一方、クラウドコンピューティング市場では、GoogleはGoogle App Engineとよばれるインフラを含む統合開発環境とサービス環境を提供している。これは、アプリケーションエンジニアはインフラレイヤを一切考慮することなく独自のサービスを提供できる。まさにプラットフォームの提供(PaaS)である。米国AmazonはストレージサービスのAmazon S3 (Amazon Simple Storage Service)、とAmazon EC2 (Amazon Elastic Compute Cloud)を統合型のサービスとしてクラウドコンピューティングの環境を提供している。

しかしながら、GoogleもAmazonもこれらのクラウドコンピューティング環境を収益の中心においてはいない。GoogleはAdwords, Adsenceなどの広告ビジネスが依然として収益の中心モデルとなっており、AmazonはECプラットフォームを含むオンラインショッピングが収益の中心である。

インターネット接続環境、サーバーハードウェアなどのインフラストラクチャ環境はインターネットサービスを行う上で必ず必要とされる。プロトタイプやスタートアップの時点では、数台(場合によっては1台)の専用のレンタルサーバー環境でサービスを提供できるが、トラフィックが増大し、収益が上がるようになると、レンタルサーバーでは十分なサービスが提供できなくなり、データセンターのコロケーションサービスに移行せざろう得ない。さらにサーバー台数が増加すると、専用ラック、専用フロアと収益にしめるインフラコスト(原価)の割合が増加してくる。このインフラコストは馬鹿にならない。mixiにしても、Greeにしても通ってきたパスである。サービスが一定以上になるとオペレーションコストを低減するか、インフラの原価を低減するかで営業利益率を上げるほかない。

GoogleもAmazonもインフラレイヤのテクノロジーを駆使し、インフラストラクチャーコストを低減している。不動産と同じで一定規模以上になると、コロケーション環境ではなく、自社iDCを持つことが、インフラストラクチャーコストを低減するもっとも効果的な施策である。

このように、クラウドコンピューティングの市場に参入するには、データセンターインフラストラクチャ、ネットワーク機器、サーバーハードウェア、オペレーティングシステム、ミドルウェア、さらにはクラウドを実現するアプリケーション、つまり垂直統合型の環境が求められる。GoogleもAmazonも自社サービスの中で培ってきたインフラテクノロジーをベースにPaaSと呼ばれるクラウド・コンピューティング環境を提供しているのである。アプリケーションからインフラまで垂直統合でスケールするビジネスを持つGoogle, Amazonだから早期に参入できているのだろう。

ということで今年一年、例年に増してブレイクスルーを実現させるため集中していきたい。