Blogot - 旅とF1と車と男の嗜み

旅とF1と車と男の嗜みをテーマとした後藤康成のブログ。

SaaSで企業は本当にハッピーになれるか(後編)

前回に続いて後編

企業で利用するサーバー環境をオフィスではなくiDCに設置することによるメリットは大きい。例えば、物理的セキュリティー、ネットワークセキュリティー、ネットワークの可用性、停電時などの稼働率など社内ラックに設置するより圧倒的に利便性、機密性が高くなる。例えるなら、大金を自宅のタンスに入れておくより、銀行に預けておくようなものである。実際に一昨年の東京大停電の時僕は首都圏を離れていたが、停電の最中なんの問題もなくメールが利用できた。SaaSサービスを利用する場合メリットはさらに大きくなる。SaaS事業者がサーバーの管理を行ってくれることで、自社で管理することなく管理コストが圧倒的に下がるのである。ここでいうコストとはサーバー、ネットワーク機器の費用もさることながら、システム管理者の作業コストや管理コストである。

従業員が30名程度の企業であれば、IT設備が重要な経営資産となり、停止が許されない環境となってくる。30名から100名規模と成長企業において、例えば、メールサーバーをリプレースする場合でも、拡張性と可用性さらには機密性を高めるためにのキャパシティープランニング、機器選定、予算との整合性など、システム管理者の責任と負担を大きくなる。多くの場合システム管理者は専任ではなく、事業との掛け持ち状態である。

年々増え続けるサーバー台数、サーバールームの電力量、サーバーからの放熱にる熱対策、資産管理を行っているが、年に何度かのサーバーやネットワーク機器の棚卸しなどITシステムへのニーズの増加や従業員の増加などシステム管理者に課せられる業務量は増大し、最も重要な管理タスクである、経営に直結するシステムの設計やセキュリティー対策、さらには変化する技術トレンドのキャッチアップなどが疎かになる傾向にある。社内システムを適切にに分析し、SaaSを導入することにより、システム管理者は日常的な煩雑な業務に追われることなく、社内システムに従事できるはずだ。

ビジネスパーソンが日常的に利用するビジネスソフトウェアは、社内外とのコミュニケーション手段としてEメール、自分のスケジュール、セクションのスケジュール共有を行うために、スケジューラー、ドキュメント作成、スプレッドシート、プレゼンテーションソフトといったオフィススィートであろう、昨年からのIT業界のトレンドとしてはこのような日常的に利用するビジネスツールをクライアントコンピューターにインストールするソフトウェアとしてではなく、インターネットサービスとして提供するといったビジネスパーソン向けのSaaSである。

米国を見てみると明らかにクラウドコンピューティングのトレンドの波が来ている。マイクロソフトはこれまでクライアントコンピューターにインストールしてきたMicrosoft Officeをサーバーサイドに移行する計画を発表し、Office Liveと命名した。サーチエンジンの雄であるグーグルはGmail, Google Calendar, Google Docs, GoogleスプレッドシートなどをセットにしたGoogle Appsを企業向けに提供している。そして米国ヤフーは昨年夏、Webメールを中心としたビジネスパーソン向けコラボレーションスィートを開発提供するZimbra社のZimbra Collaboration Suiteといった買収しマイクロソフト、グーグルに対抗しようとしている。

このようなクライアントソフトウェアからサーバーサイドへのパワーシフトは今回が初めてではない、1980年代企業向けアプリケーションは、サーバー集中型システムである汎用コンピューターから「分散化」、「オープンシステム」という名の下においてにクライアント・サーバー型の分散システムに移行した。いつでも、どこでもアクセスできインターネットが普及した現在では、確保されたセキュリティーの下、様々な経営資源にアクセスできる環境が整ったといっていいだろう。

しかしながら、インターネット故にが抱えるオープンなネットワーク故にセキュリティー、保証されないネットワーク帯域などこれらの問題はNGNへ引き継がれるであろう。