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旅とF1と車と男の嗜みをテーマとした後藤康成のブログ。

次世代スーパーコンピューターの開発予算を削減についての考察

CNET Japan「スパコン世界一目指すべき? 事業仕分けを考える」のエントリー内容をより深掘りしてみる。

次世代スーパーコンピューターの開発予算を削減については、マスメディアを始めWeb上においてもブログなどで多くの意見と議論があるが、次世代スーパーコンピューターという科学技術にフォーカスした、近視眼的な見方ではなく国の財政といったマクロの視点とミクロの視点の双方から考える必要がある。(もちろんすべての事業仕分けの予算見直しについてもである)

現在行われている事業仕分けの概算要求については一般会計、特別会計の各予算費用であるが、これは企業会計で云うと来年度の損益計算書(P/L)つまり歳入(レベニュー)と歳出(コスト)のうち、歳出の削減についての予算レビューである。

一方、企業会計で重視されるのが、貸借対照表(BS)である。財務省のサイト(ダウンロード可能)の、「平成19年度の国の財務書類」に掲載されている国の貸借対照表によると、なんと負債総額は983兆円を超え279兆円の債務超過状態である。(平成19年度以降の国の財務書類は見あたらなかった)つまり、企業会計的にはこの債務超過は企業の存続を問われる致命的な状況なのである。普通は企業に対しては金融機関はそう簡単に融資をしてもらえない。たとえば、最近ニュースとなっている、日本航空は実質債務超過額が7422億円以上に陥っていると報道されている。

ちなみに、この債務超過を解消するには、いろいろな財務テクニックがあるが、一般的には売上げを増やす(現金や現金同等物を増やすか)か資本金を増額する必要があるが、国の場合、企業とは違い資本金が無いので、本質的には税収入を増やす必要がある。

さらには、今回の「平成 22 年度予算編成の基本的考え方について」の総論(P110)には平成21年度一般会計予算(補正予算込み)の公債依存度は過去最悪の水準(43.0%)。国・地方の長期債務残高対GDP比は 平成21年度末に168%となる見込みであり、我が国財政は極めて危機的な状況。と掲載されている。さらには、2011年度までのプライマリー・バランス(国などの財政状況を示す。国債などの借金を除いた歳入と、過去の借金の元利払いを除く歳出を比較)黒字化の目標は、昨今の経済・金融情勢の悪化に伴う税収減等により、達成困難になったと言わざるを得ない。と掲載され(下図)、 

加えて「一般政府債務残高対GDP比の国際比較」(下図)においてもかなり厳しい状況であることが伺える。 

つまり、日本国は極めて危機的な状況に陥っていることを認識する必要がある。

今回の事業仕分けの基本的な方針となる「平成 22 年度予算編成の基本的考え方について」見てみると、高齢化の下での社会保障制度とその財源、具体体には、社会保障、医療、雇用・生活保護、少子化対策などが重点施策として掲載されている。この分野に対して十分な費用投下を行うというコンセンサスはとれている前提でこの方針にぶれない事業仕分けを行うのが当然である。

もちろん、ミクロの視点では次世代スーパーコンピューターの開発は日本の科学技術の発展や日本のコンピューター産業の活性化に寄与すること、さらには日本の科学技術発展にマイナスの影響を与える可能性は認識しており一概に否定できないが、このような財政状態で次世代スーパーコンピューターの研究開発について聖域とするのはナンセンスであると考える。

会社が潰れそうな状況で研究開発費にどれだけ予算をつけるかというと、研究開発費は削減あるいは凍結が一般的な経営判断なのだから。